分散分析
<分散分析とは>
ある実験をいくつかの条件で行ったとします。 ひとつの条件に対し繰り返し実験を行ったとき、 同じ条件であっても、そのなかで平均値からのずれが多かれ少なかれ生じます。 これを実験誤差と呼びます。
また条件を変えて同様の実験を繰り返し行ったとき、条件の違いから他の条件の場合の 平均値との差が出た場合、 その差を生み出した要因を 因子と呼びます。
データのもつばらつきは分散として得られるのですが、 分散の大小は実験誤差と因子に左右されるといえます。 分散が大きければ散らばりも大きく、 分散が小さければ散らばりも小さいと解釈できます。
分散分析とは、データの持つばらつきが因子によるものよりも実験誤差によるもの のほうが大きいかを検定し、因子によるばらつきの方が大きければ 母平均に差がある とする検定です。

◎一元配置分散分析
ある1つの因子を 取り上げて、その因子について条件を変えることにより データに違いが生じるかどうかを検定する方法です。 因子についての条件が同じものを集めた集団を群と呼びます。 各データはほぼ正規分布に従いかつ等分散であるものとします。 各群のデータ数は同じでなくてもかまいません。
例:ある化学合成において温度を200,220,250℃の3種類に設定して 実験を行う。また各温度の設定で複数回の実験を行いデータを取るものとする。
*この実験の場合の因子は「温度」ということになります。ここで、 温度によってデータに違いがあるとわかってもどの群で差があるかを 知ることはできません。

◎二元配置分散分析
2つの因子を 取り上げて、それらの因子についての条件を変えることで データに違いが生じるかどうかを検定します。

○各水準の繰り返し数が等しく、 1である場合
ひとつの条件に対する測定値がすべて1つである場合のことです。
例:以下の表のようなデータがあるとき、「4種の飼料間で体重増加に差があるかどうか、また3種の系統ごとで体重増加に差があるかどうか」を調べる。
飼料
系統
9.215.510.016.7
3.219.015.810.3
7.618.98.410.1

○各水準の繰り返し数が等しく、 2以上である場合
ひとつの条件に対する測定値がすべて等しく、かつ2つ以上の場合です。
例:年齢、投薬期間(月)ごとにそれぞれ別々に3人ずつ計48人の被験者の投薬後24時間後の血中濃度を測定したとき、「年齢と投薬期間が血中濃度に関係しているかどうか」を調べる。
21-30歳31-40歳41-50歳51-60歳
0-614.2
13.5
14.3
15.0
14.6
17.7
19.8
15.9
20.3
18.5
16.9
19.6
6-1212.8
18.6
17.5
18.4
17.2
14.9
16.9
16.4
18.7
20.1
19.8
19.2
12-1814.2
15.7
18.2
17.9
19.6
14.7
20.1
21.3
16.5
19.3
28.5
20.2
18-2420.1
17.7
20.5
15.7
18.2
20.4
19.9
16.3
17.3
22.4
22.2
24.0

○各水準の繰り返し数が等しくないが、 周辺度数に比例する場合
ひとつの条件に対する測定値が等しくない場合に用います。
ただし、測定値の個数の比(a1:a2:a3:・・・、b1:b2:b3:・・・)が等しくなるようにしてください。 下記の例では、b1,b2,b3,b4のいずれの場合もa1:a2:a3=1:1:2, また、a1,a2,a3のいずれの場合もb1:b2:b3:b4=2:2:3:3 となっています。
例:菌種a1,a2,a3を用い、温度を変えて、あるタンパク質の 生成量を測定したとき、「菌種の違いと温度の違いがタンパク質生成量に 関係しているかどうか」を調べる。
b1(低温)b2(中温)b3(高温)b4(超高温)
a1 6.0
5.8
7.8
8.1
9.8
6.7
8.4
8.2
5.9
7.6
a2 8.8
6.6
8.4
7.1
8.5
6.4
6.7
7.3
9.4
9.8
a3 6.4
7.4
9.4
6.9
7.9
9.2
6.7
8.2
9.2
5.5
7.3
9.6
8.4
7.7
5.3
9.7
5.5
6.4
8.6
7.2

○各水準の繰り返し数が等しくなく、 周辺度数にも比例しない場合
ひとつの条件に対する測定値が等しくない場合に用います。
例:マウスとラットの雌雄それぞれ (マウスの雄:3匹、マウスの雌:2匹、ラットの雄:2匹、ラットの雌:4匹)の 脳内アドレナリン量を測定したとき、 「マウスとラットの違いと雌雄の違いが 脳内アドレナリン量に関係しているかどうか」を調べる。
マウスラット
24.8
23.9
24.1
25.0
26.6
28.8
22.6
28.4
27.1
29.5
26.8